私は、子どものころから、のんびり育ってきました。
大人になってから、ずいぶん経ちましたが、1日の中で嫌なことはあっても、時間が経てば忘れてしまうようなこと。
有難いことに自分の好きなことも出来ます。
のんきに暮らせることが当たり前のことだから、感謝したいなって思うんですよね。
『くまのこうちょうせんせい』
図書館で、子どもたちが手にした絵本。
まだ字の読めない子どもたちは、絵の親しみやすさや本の肌触りで借りる本を決めていきます。
今回の本は、こんのひとみさんの『くまのこうちょうせんせい』(金の星社)。
表紙にはかわいらしい眼鏡のくまこうちょうせんせいが、いもとようこさんによって描かれています。
読み進めていくと、くま校長先生とひつじ君が笑顔で変わっていく姿が読み取れます。
毎朝、大きな声で「おはよう」とあいさつをしている、くま校長先生。 みんなはあいさつできるけど、ひつじ君は大きな声であいさつができません。 ひつじ君は、校長先生に大きな声であいさつできるように練習に励みますが上手くいかず。 ある日、校長先生が病気になってしまいました。 みんなの顔を見に、少しの時間だけ学校にやってきた校長先生の声は、とても小さくなりました。 校長先生は、病気になって分かったのだそうです。 子どもたちに寄り添い、伴走した校長先生に見守られたひつじ君は、大きな声を出すことができるようになりました。
校長先生が気が付いたこと
校長先生は、病気になって、声が出せなくなっても、お医者さんや看護師さんは「もっと大きな声を出してください」とは言われなかったんですね。
病気の人に、医療従事者の皆さんが気軽に励ますということは、しないかもしれません。
だけど、くま校長先生は、ひつじ君の気持ちが分かったんですね。
理由があって、元気が出なかったり、落ち込んでいるときに、「頑張って」とか「元気を出して」と言われるのは、余計にもつらくなることがあります。
そういう時こそ、傍にいて話を聴くことが大事なことなのだな、と思いました。
この本のあとがきには、こんのひとみさんが、実話であることを記載されています。
神奈川県茅ケ崎市の公立小学校の校長先生だった大瀬敏昭さんのお話。
ガンで余命宣告も受けた後も、学校に通い『命の授業』を続けたのだそうです。
大瀬さんが病気になって初めて分かったこと。
「子どもは明るくて元気が一番と思っていたけれど、本当は子どもは小さくて弱いもの。子どもたちの痛みを分かちあうのが大人の役目だと思います」
私自身も、子どもたちと一緒に笑い、喜び、叱り、時に怒り、悲しむことを体験している毎日ですが、自分の物差しで、「子どもとは~」と思い込んでいた節があると思いました。
くま校長先生が校門の前で毎朝「大きな声であいさつをしましょう。」と言っていたのは、間違いではないはず。
大きな声で挨拶できると、あいさつする人もされた人も気持ち良いですしね。
良いことを強制するのではなくて、みんなに耳を傾けることが大事なことだって、くま校長先生が教えてくれました。
まだ幼い子どもたちは、出来ることもあるし、当然出来ないこともあります。
出来る出来ないの物差しだけでなくて、子どもたちの気持ちに寄り添ってあげることができるのは、身近にいる家族の私。
みんなと同じペースでなくても、一番近くで一緒に寄り添って伴走できるのは、誰なのか、考えるきっかけをくれた絵本でした。
私の役目
私の周りに家族がいること。これは当たり前と思っていました。
でも、世界中を見回すと紛争があったり、様々な要因で離ればなれになる家族がいます。
当たり前に感謝すること。
そして、元気な時もそうでない時も、一番身近な存在として、寄り添うこと。
実話とは知らずに借りた図書館の本ですが、『くまのこうちょうせんせい』のお話からは、生きることについて間接的に授業を受けた気分になれました。