【読書感想】『どさんこうまのふゆ』厳しい環境だから歩みだすこと、生き抜くことを教えてくれる本

読書感想

今の生活に変化が訪れそうな予感。

今の生活が落ち着いているから、ちょっとした変化にも敏感になります。

漠然とした不安があるとき、子どもたちと図書館で借りた絵本に救われました。

北海道で生まれそだち、今も北海道上川郡清水町にお住いの本田哲也さんの『どさんこうまのふゆ』芸文社 (2014/7/30)の読書感想です。

どさんこ

北海道産の馬のことです。

もともとは、東北地方で飼育されていた南部馬を本州から持ち込んで飼育し始めたのがきっかけと言われています。

東北地方から連れてきた馬は、夏の間に海産物を運搬し、冬場は放牧して、また春になったら放牧されていた馬を捕獲して、運搬の仕事をこなしていたのだそう。

東北地方も厳しい環境ですが、北海道はさらに厳しい環境。

冬の間に放牧していたということは、馬が自ら食料を求めて生活しなくてはなりません。

寒さの厳しい環境で生き抜いた馬は、徐々に北海道の気候風土に合わせて進化し、どさんこ(道産子)となったのです。

本田哲也さんの絵本は、子どもたちの寝かしつけ前に読みました。

一度読み進めるだけで、なぜか引き込まれます。

解説まで読むと、本田さんが幼かった時に見かけた光景が、何となく情景として浮かんできました。

私だけでなく、子どもたちも絵や躍動する冬や馬の姿に惹かれたらしく、何度も何度も読んでいる本です。

出版は2014年となっていますが、実は1991年に出版され、復刊したとのこと。

さらに調べると、この絵本は石こう地と油彩を用いて描いた絵本だとのことです。

北海道のどさんこうまが厳しい寒さの冬を乗り越える力強さを感じたのは、素敵な画とストーリーがあるからなのだと納得がいきました。

厳しい環境を生き抜く力を感じられる絵本

どさんんこうまは、ちからもち。

馬の体重自体は350~400kgぐらいあるのだそうですが、200kgぐらいの荷物は運べるのだそうです。

体重の半分の重さを背負って長距離を運搬できる体力は図り知れません。

北海道での開拓が盛んだった頃、馬車軌道も沢山あったので、活躍の場は多かったのだと思います。

南部馬といえば、下北半島の寒立馬が有名ですが、どさんんこうまは、さらに強靭な足腰を持ちつつも、冬場は粗食で過ごすことのできる変化を受け入れた馬。

馬は草や藁を食べるイメージですが、どさんこうまは、わかめを食べに海を目指します。

絵本では、馬たちが冬を耐え忍ぶ姿やシーンとした冬の夜、そして海を目指す姿が重工に描かれています。

画からは、馬たちが走る音や風の音が、すぐそこにあるような感じがします。

海を目指し、春を待つ姿には感動を覚えました。

怖いけど、歩み出すのだ

変化が怖いのはなぜなのでしょうか。

今の自分が落ち着いているから、この生活を保ちたいと考えるのは自然なことです。

変化が怖いのは、この生活が崩れてしまうことを恐れているからなんですよね。

「大丈夫、大丈夫」

漠然とした不安もあるけれど、出来ることを一つずつ解決していくと不安は解けていくかもしれません。

気持ちが滅入って、何もしないよりも前を向いて進んでみた方が問題が解けていく可能性があるんですよね。

豪雪の中、不安になる仔馬に寄り添い、声をかけてくれる母さん馬はとてもたくましく、仔馬を安心させてくれます。

母さん馬は、海まで向かえば食料にありつけるかもしれないこと、春はきっとやってくることを教えてくれます。

絵本は、どさんこうまの生活を描いたものですが、新しい風を受け入れる自分にとって背中を押してくれるような生きる力を教えてくれる重厚な絵本でした。