虫の声を聴きながら本をそっと読むのが好きです。
晴れた日も雨の日も朝でも昼でも夜でも虫って鳴くんですね。
知っていたような、知らなかったような。
自然の音を聞きながら本を開きます。
今回は図書館本。瀬尾まいこさんの『天国はまだ遠く』新潮文庫(2004/6/22)です。
睡眠は一番の薬
主人公は山田千鶴。
物語の始まりは、千鶴が遠くへ遠くへ行くことから始まります。
現実から逃れたいときは、遠くに思いを馳せたり、現実逃避してみたりします。
こちらの世界に戻ってこれれば良いけど、現実が待っていると思うと心が苦しくなって、実際に手の届かない遠くに行ってしまう人は後を絶ちません。
私は、体質上の問題かもしれませんが、睡眠不足になると体調も精神状態も追いつめられる気がします。
身体も心も疲れた時はまず、寝る!
思い切り寝て、起きた時にスッキリすれば、少しはまともな判断ができるかもしれないと思うのです。
単純に1日寝れば治る問題に悩まないでしょと言われればそうかもしれませんが、睡眠が満たされていれば、少なくとも自分でじっくり考えて行動することができるはず。
悩んでいることを人に話して支援を求めることだってできるかもしれない。
少しでも心身が回復すれば、なにか手立てが見つかる可能性があるんじゃないのかなと思うのです。
当たり前のことが当たり前でなくなった時
とにかく遠くへ思いを募らせて電車に乗り、タクシーに乗りさびれた村にたどり着いた千鶴は、タクシーの運転手によって民宿ヤマダに連れてこられます。
民宿ヤマダはかつて民宿を営んでいたもの、今は若い男が一人住んでいるだけ。
怪しい環境と思いながらも千鶴は睡眠薬を飲んで決行を決意。
ところが、それは失敗に終わります。
丸2日寝たことによって爽快な目覚めを体験した千鶴は、頼んでもいない朝食のために起こされて現実がまだ続いていることを知ります。
睡眠が満たされ、温かい食べ物を頂くって当たり前のことですが、当たり前じゃなかったりするんですよね。
仕事が忙しかったり、何となく体がだるかったりすると、寝る、食べるがおろそかになりがち。
寝不足と栄養不足でますます前とか下とか一点しか見られなくなります。
疲れた時こそ、子どものようによく寝てよく食べることでリセットする。
人間の原点に立ち返るサインなのかなとも思いました。
悩んでいるときこそ、自然に任せる
募る思いとは裏腹に爽快な目覚めとなった千鶴は、民宿のタムラさんが用意した朝食を食べ、民宿の周りを散策します。
民宿の周りには廃屋があり、かつて集落だったことを伝えているようでした。
散歩を始めた頃は、廃屋や荒れた田畑、うっそうとした木々が目に付きます。
民宿の生活がしばらく続き、よく寝て、よく食べて、散歩が習慣化された頃になると、田畑を手入れしている人がいたり、いつ開いているか不明なパン屋さんがあることに気が付いてきます。
心身が病んでいるときは、まず休み、栄養を補給し、自分の体調が戻って来たら、自然を感じることはオススメですね。
自然には偉大な力があります。
そういえば、『時間術大全』のリフレッシュ方法にも自然が取り入れられていました。
普段はそこにあるだけと気にも留めないものですが、人々にマイナスイオンのようなプラスのパワーを送り続けていると思うのです。
海でも山でも森でも良い。
自然を見る、自然を感じる、自然の中を歩くと、悩みごとで高ぶっていた自分の気持ちを落ち着かせてくれます。
ひらめきや開き直りも体験できるかもしれません。
悩んでいるときこそ、自然に任せる。
自然は緑の自然のことを指す言葉ですが、無理のないさまという意味もあります。
悩んでも答えが出ないときには自然の道理に従うのも悪くない選択ではないのかと思うのです。
自分で何かを生み出すって面白い
旬のものって美味しいですよね。
品種改良や養殖、ハウス栽培、低温保存などの環境調整によってスーパーには野菜や果物、魚が途絶えることなく陳列されています。
技術の向上によって美味しさも保たれているのですが、やっぱり旬のものは味が違う気がします。
年中食べれることは嬉しいことなのですが、旬の贅沢も味わいたいものです。
いずれにしても良い時代に生まれたことに感謝ですね。
感謝と言えば、このブログ。
間もなく5カ月目を迎えるのですが、
こんなに続けられるとは思っても見ませんでした。
小学生の頃に出された夏休みの絵日記や天気を記入する宿題も途中で終わって、夏休み終盤に慌てていたことを考えれば、ずいぶんと自分が進歩したものです。
大人になって初めて自分の思いを表出することが楽しいことなのかを教えてくれたのが、ブログでした。
今度は苦手な絵でもかいてみようかな。
子どもたちと大声で歌を歌うのもいいな。
文字でも絵でも歌声でも、自分で何かを生み出すって面白いことです。
それぞれの選択
自分と向き合うことを心の洗濯と聞いたことがあります。
いい言葉を見つけたな、と思ったものです。
生きている限り、自分の選択は続いていきます。
目が覚めて起きるというのも選択、着替えをするのも選択、ありとあらゆる選択を自分がしなくてはなりません。
無意識のうちに行っていることでも、自分がそうしたいという意思によって選択されているのです。
選択ばかりだと誰でも疲れてしまうのは当然のこと。
だから、心の洗濯が必要な時もあるのです。
真っ新な気持ちにリセットされたら、また選択をして自分の人生を歩むことができます。
自分の選択は進むこともできるし、引き返すこともできます。
この本はスイスイ読めて読了後も爽快感というか、前向きになれる本です。
それは、それぞれの選択は素晴らしいことだということを教えてくれたからだと思いました。
この本を取った理由
図書館のカウンターの近くにあったから。単純ですよね。
初めての大活字本です。
大活字本ってどういう意味?と手に取ってみたのが始まりでした。
パラパラめくるとなんだか新鮮な気分に。
文字が大きすぎて初めは違和感を感じましたが、慣れてくると子どもたちや目が見えずらくなってきた初老の方など老若男女問わず楽しめる本だということが分かりました。
周りが見えなくなりがちになりますが、こうやって普段と違うモノを手に取り、使ってみるとモノの良さを知ることができます。
また一つ勉強になりました。
お金もかかるのでしょうけど、小さな工夫やつながりがたくさん増えると、“誰かのウレシイ”が少しずつ増えて少しずつ明るくなるんだろうなと大活字本に出会って思ったのでした。