樹木希林120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ~ 樹木希林 宝島社 (2019/1/28)
樹木希林さん(1943-2018)は、『万引き家族』などの映画で主におばあさん役で登場していた、女優さんです。
2004年に乳がんが発覚。
右乳房を全摘出する手術を受けるも、身体のあちこちにがんの転移が見つかり、2013年に「全身がん」の状態であると公表。
2018年に75歳で亡くなられました。
この本は、テレビや新聞や雑誌などに載った樹木希林さんの言葉の中から120を選びまとめたものです。
帯には、
とにかく、世の中を面白がること。老いだって、病気だって、自分の栄養になる。孤独、成熟、家族、仕事…希林さんが教えてくれたあるがままの生き方。
とあります。
映画以外で樹木希林さんのことは、あまり知らないですし、芸能人の本って何となくフェイクという先入観があったのですが、アマゾンで出てきたので、読んでみました。l
人生と幸福について
幸せというのは、「常にあるもの」ではなくて、「自分でみつけるもの」
『樹木希林120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ~』P18
映画『海よりもまだ深く』公開時のインタビューで、幸せについて聞かれて答えたのだそうです。
映画を見たことがないので、どういう成り行きで質問され答えたのかもわからないのですが、「幸せって、そうなのかも」と思わせてくれるフレーズです。
あたふたと過ぎていく日常生活の中で、小さな幸せを見つけて楽しむ、ありがたがるなど続けていくと幸せの塊になるのかもしれません。
嫌な話になったとしても、顔だけは笑うようにしているのよ
『樹木希林120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ~』P34
この言葉は、最近読んだ瀬尾まいこさんの『そしてバトンは、渡された』に出てくる主人公、優子の2番目の母から教えられる言葉
「楽しいときは思いっきり、しんどいときもそれなりに笑っておかなきゃ」
に似ているなと思いました。
ニコニコしているとラッキーが訪れるのだと思うと、少しだけ頬が緩みます。
人間と世間について
お金や地位や名声もなくて、傍からは地味でつまらない人生に見えたとしても、本人が本当に好きなことができていて「ああ、幸せだなあ」と思っていれば、その人の人生はキラキラ輝いていますよ。
『樹木希林120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ~』P144
この言葉も、映画『海よりもまだ深く』公開時のインタビューで、幸せについて聞かれて答えたのだそうです。
価値観は他人が作るものではない、自分で作るのだ
と教えてくれる言葉ですね。
この本を読むきっかけとなったのは、アマゾンのレビューが多かったり、検索上位だったことから手に取ったので、私自身は多くの人の評価や行動を完全に排除することは、難しいことだなとは思いますが、自分の中の価値観は自分自身で築き上げていきたいなと思いました。
家族や子育てについて
人は父を、いい星の下に生まれたと言っていたけど、違う。いい星の下にしたんですよ、自分の性格で。
『樹木希林120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ~』P198
樹木希林さんのお父様は警察官から薩摩琵琶奏者となった方だそうです。
当時としては、異例の転職だったのかもしれません。
樹木希林さんだけでなく、お父様もしっかりとした価値観をお持ちで、周りの人々を楽しませてくれたのではないかな、と想像するような一文でした。
マイナスのところを、違う言葉でもって評価するようにしているの。
『樹木希林120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ~』P204
テレビ番組で孫への接し方について問われたときに、答えた内容だそうです。
家族だと近い分だけ、直感的にものを言ってしまいがちです。
言い方を変えることで空気が変わることもあります。
「親しき中にも礼儀あり」という言葉があるように、家族だからこそ、言葉も態度も大切に選んでいきたいものだなあ、と思う一文でした。
生と死について
長生きしたいと思うわけではないし、年を取るのはちっとも苦ではないんですよ。ただ、あたふたせずに淡々と生きて淡々と死んでいきたいなあと思うだけです。
『樹木希林120の遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ~』P264
乳がんが発覚する2年前、2002年の雑誌のインタビューで答えられたそうです。
病気のありなしに関係なく、達観した死生観をお持ちだったことが窺えました。
自堕落ではなく、ありのまま、自分の体にも自分が責任をもって無理せずに淡々と生活されたのかな、と思いました。
感想
270ページの本ですが、2.3時間あればすぐに読めます。
読み進めていくと、樹木希林さんのシンプルな考え方、生き方に触れられる気がします。
希林さんから「自分の中に価値観はありますか? 自分で育てていますか?」と問われているような感じがして、私は胸に手をあててみたいと思いました。
樹木希林さんは、多くの人を映画やドラマで楽しませてくれる一方で、自然体で自分らしく輝く生き方を遺された素敵な方ですね。
まだ見ていない映画やドラマもあるので、まだまだ楽しませていただこうと思いました。