そう遠くない昔。
元旦はみんなで歳をとる日でした。
数え年で年齢を重ねている地域では、生まれた赤ちゃんは0歳ではなくて1歳になります。
歳を重ねるのは1月1日で、みんな一緒。
12月30日に生まれた赤ちゃんも、2日後の1月1日になると2歳になる勘定です。
日本ではほとんどが誕生日で歳をとりますが、一定の年齢以上の方になると、数え年の話題が出てきますし、外国例えば韓国などは数え年で歳を重ねるのだそうです。
歳をとるということ
自分の誕生日と元旦と1年に2回、歳を迎えるお祝いをするからでしょうか。
何となく歳をとることに悲観的になるというか、ネガティブな感覚を持ってしまいます。
今回読んだ本は78歳の主人公、忍ハナさんのお話。
内館牧子さんの『すぐ死ぬんだから』(2018/8/21講談社)です。
タイトル通り、終活を題材とした小説です。
作者の内館さんは、同世代に向けた小説を書かれたのかもしれませんが、アラフォーの私もタイトルに惹かれて読んでみました。
読み終えた時には、何とな身だしなみを整えたくなるようなそんな力を感じさせてくれました。
ひるむ必要はない
老いに対してのネガティブな感情。
これは自分の内面から出てきた者なのか、それとも周りに合わせてそういう風にしてしまったのか。
昨日今日初めて老いてきたわけではないのです。
時間をかけてゆっくりと自分の価値観というのもを変化させていくものなのだろうと思います。
主人公の忍ハナさん78歳は、夫婦で麻布で酒屋を営んでいた人。
ここで私は、「麻布のご婦人ね、お奇麗になさっていることでしょう」と思いました。
吉幾三さんの歌にでも出てきそうな田舎の出身である私は、東京都内の生まれというだけで変な先入観を持ってしまいます。
自分が思ったとおり、忍ハナさんはとっても洒落た女性。
背表紙に載っている忍ハナさんは、見た目もカッコいいし、自分に自信がありそうな風貌。
実際の姿を見なくとも内館さんの文章からイメージがどんどん浮かびます。
自分の先入観を否定するわけではないのです。
自分の経験やインプットされた先入観が物事を見るときに邪魔をしてはならないし、自分を卑下することもないということなのです。
歳をとったから年齢相応の服を着た方がいいとか、歳をとったから適当でいいではないのです。
この本では、忍ハナさんの心の声も沢山聴けます。
その中の一つ
しっかりしろ。自分を磨け。
シャンと歩け。セルフネグレクトなんてとんでもない。
自分を大事しろ。
忍ハナさんからの目を覚まされるような言葉です。
もちろん声に出しては行っていません。
忍ハナさんの心の声です。
忍ハナさんの言葉は、とっても強い言葉ですが、自分で自分を放棄(ネグレクト)してしまうことが老いではないという強い気持ちが伝わってきます。
年齢や時代なんて関係ない
忍ハナさんの言葉が、私に喝を入れたのは、まぎれもない私もセルフネグレクト気味だったからです。
自宅の中での生活がほとんどで、顔を洗ったら化粧水をつけておしまい。
来ているものも古くなったジャージで、毎日同じような格好をしています。
それが悪いことではないのですが、メリハリをつけて自分を大事にしないと、自分という人間を放棄してしまうよ、という警告を受けたような気がしたのです。
時代がどうなろうとも、年齢がいくつになろうとも、自分は自分をどういう風にしていくのかということ。
自分プロデュースは、自分中心で良いのし、周りが求める相応に、自分自身を小さくまとめる必要はないということを強く教えてくれます。
まずは、顔を洗ってみましょう。
そして、スキンケア。髪をとかしてみましょう。
きちんと選んで服を着てみましょう。
自分で選択して、自分をプロデュースすることで、毎日を楽しく過ごしていきたいですね。
老いに対する不安、出来ていたことがだんだんと遅くなったり、出来なくなることも増えてくる現実を受け止める日が来るのでしょう。
そのことを目の当たりにしても、年のせいにすることなく、前向きに自分で選択できるように自分を磨いていきたいものです。
そんな活力をくれるような、内館さんの小説でした。