先日の『カヨ子ばあちゃん』シリーズを図書館から借りるときに、一緒に借りた本。
『非正規介護職員ヨボヨボ日記』です。
なんだか分からないのですが、題名も表紙も惹かれて読んでみました。
生活のために働くのだけれど、根本的には人が好きな著者の会議施設での奮闘ぶりが笑えるエピソードと一緒に書かれています。
サーっと読めるリアルな介護の現場のお話です。
何となく気になる絵
真山剛さんの『非正規介護職員ヨボヨボ日記』三五館シンシャ(2021/5/1)。
何となく気になる表紙の絵に惹かれて読んでみました。
著者は男性で、大学卒業後、デザイン事務所勤務や建設コンサルタント経営、居酒屋経営など介護とは無縁の職業を経て、56歳の時に介護業界に飛び込んでいます。
生活のためとはいえ、昔でいうところのホームヘルパー2級にあたる「介護職員初任者研修」を受講し、世間でいうところの定年間近に異業種への転身は、勇気がいったことだろうと思います。
出版した時点で4年目、現在で5年目という、比較的職歴の浅い現役介護職員が書いたリアルな現場です。
日記形式の本書は、とても読みやすく、介護の現場を知らない人が読んでも、枠外に記載してある解説を読むとよく分かります。
そしてこの解説が独特で面白いです。
著者の人柄からゆえに、シュールな内容もクスっと笑わせてくれたりするのかな、と思いました。
知りたいような知りたくないような
今の私は、難病を抱えていますが、大きな支障はありません。
人より早く歩けなかったり、疲れやすかったり、人より睡眠時間が長いことも私にとっては当たり前。
私が、年をとったらなんて想像ができません。
本書に登場する介護施設の利用者さんだって、昔はバリバリ仕事もしていただろうし、自活していたはず。
高齢者になって認知症を抱え、施設で誰かのお世話になるなんて予想していなかったのではないかとも思います。
タイムマシンにのった若いころの利用者さんが、介護施設で暮らす老後をみたら愕然をするに違いありません。
私にとっては、知りたいような知りたくないような現場のリアル。
「こんなの嫌だな」と思いながら、読み進めることもありました。
老いは、誰にもやってきます。
甥から逃げるわけではないのですが、老いの速度を緩めるために、やっぱり適度な運動など健康寿命を延ばす対策は必要ですね。
それから、ふだんから自分が機嫌良く生活を送れるようにしたいものです。
理想と現実
理想を持って資格を取ったり、職業に誇りを持つことは素晴らしいことだと思います。
私自身は、学生の時に就職活動を経験していますが、就職氷河期ともいわれた時代の名残があり、とても自分の思いどおりに事は運びませんでした。
様々な資格も取りましたが、私自身に誇りを持たせてくれるものは1つもありませんでした。
ご縁あって入社できた会社では、とても良くしていただけましたが、やはり職場には一人や二人は曲者がいたものです。
彼らは自分自身の掲げる理想があり、知らず知らずのうちに、その理想を私にも求めようとしているのではないかと思うことがありました。
そういうことが積み重なって辛く感じることも多々経験した私からすると、大なり小なりどんな業界でも、人間関係の悩みは尽きないのだなということ。
そういえばアドラー心理学では、「すべての悩みの対人関係」と説いていました。
「無駄に悩まない」というのは、難しいことですが、適度に受け流すようなポジティブな姿勢が良いのかなとも思っています。
本書にも、ボスというかお局さんのような職員が登場します。
そして、利用者さんたちには認知症があったり、身体が不自由だったり、考え方に世代間のギャップがあったり一筋縄にはいかない状況。
人と関わる仕事だからこそ、伴走したり翻弄されたりすることが当たり前。
これがリアルな介護の現場なのかなと思いました。
様々な職歴のある著者だからこそ、できる処世術。
仰天する多彩なエピソードをまるで闘牛士のように、受け流す姿には脱帽します。
様々な人の理想と現実、本性も垣間見える現場で、その人の人生の一部に触れられるということの尊さと、面白みを伝えてくれる本でした。