日本のファストフード駅そば。隙間時間に小腹と幸福を満たす空間は、ずっと続いてほしい文化

暮らし

駅そば。

列車旅の醍醐味の一つ。

ホームにかかる紺色の暖簾の奥から、冬温かく、夏も優しいそばの香りが漂います。

短時間でお腹を満たしていくれる、昔ながらのファストフード。

社会的な事情やお店側の事情もあって、お店が少なくなってきているけれど、ずっと続いてほしい旅の風景です。

惜しまれつつ

北国の駅そばが閉店しました。

理由は、新型コロナウイルスの影響とスタッフの高齢化。

私の同級生のお母さんが働いていたお弁当屋さんが経営していた駅そばでした。

ホームの片隅で、お湯を沸かし、列車が来るまでの時間にお客さんや学生たちにお腹を満たしてくれていた駅そば。

冬の時期は、出汁のきいた汁が身体に沁みわたりました。

吹雪の時に友人と狐そばをお願いしたら、「寒いからサービス」って、おにぎり、もらったっけ。

「寒いね~」と言いつつアツアツのそばを啜って、「温まる~」と白い息を吐いたりする姿を年配のおばちゃんが目尻を下げてニコニコしてくれた味のあるお店でした。

旅人にも地元の学生にも優しかった駅そばに、もう会えないと思うと寂しいです。

閉店をしたという地元の新聞ニュースで知ったときには、驚きとともに、閉まる前にもう一度食べてお礼を言っておきたかったと後悔。

富良野駅の駅そば

数年前に富良野駅に立ち寄ったときのこと。

この駅そばを見た時に、私の育った駅そばとそっくり。

紺色の暖簾にメニューの大きな看板。

立ち食いで食べてもいいし、待合室のベンチで食べてもいい緩さは、私の地元の駅と同じ。

是非是非、そばを頂きたいと思ったのですが、生憎にも定休日とのこと。

富良野といえば北海道の一大観光地だし、昭和っぽいところも残しているのかな?

末永く続いてほしいなと思った駅そばの一つでした。

駅そばの魅力

旅の合間にふらりと立ち寄った駅にある駅そば。

その土地ならではの出汁や具が入ったお蕎麦が廉価な価格で楽しめます。

首都圏では、立ち食いそばに座席スペースも設けて家族連れでも入店できそうな駅そばも登場しています。

お店の形態は少しずつ、時代に合わせて変化していくのかもしれません。

現在では東海道線なんかは、静岡県の熱海市から群馬県の高崎市、栃木県の宇都宮市くらいまでノンストップで行けてしまう長距離普通列車が運行。

乗り換えの待ち時間に、「ちょっと駅そばを」なんてことが難しくなってきている現状ですが、隙間時間に小腹と幸福をもたらす駅そばは、ずっと続いてほしい文化だなと願っているのです。