普通って何でしょうね。
何かと比べて、誰かと比べて普通っていうのかな。
比較することで安心を得られるときもあるけれど、たいていは疲れてきたり苦しくなってきたりするんじゃないかなと歳を重ねて思うのです。
お父さんと私
私とお父さんは似ています。
顔も似ているし、性格もたぶん似ている。
否定したいけど、そういうところも多分似てます。
ある一点だけの凝り性。
家族はたまったものではないのだけれど、本人としては何としてもやり遂げたい、成し遂げたい。気持ちは分かるのですが、周りは本当に振り回されるのです。
お父さんとどうして出会って一緒に過ごそうと思ったのか詳しく聞いたことはないのですが、一番の被害者は確実にお母さん。
色々小言もあるようだけれど、それも含めて人生の一部分になっているのかもしれません。
私にしても、アンバランスな性格が家族を振り回したり、道連れにしてしまっているのではないかと不安に思うこともあります。
だからと言って、今更治せるわけでもないし、若いころのように猪突猛進しないようにゆっくりと歩を進めているところ。
子どもたちに与える影響が自分にあると思うと不安よりも恐怖に思うのですが、自分を自制しながら、客観視していけたらと思っている今日この頃です。
『ぼくのお父さん』
大ヒット作『大家さんと僕』からの矢部太郎さんの最新作。
矢部太郎さんらしい、優しい色遣いとクスっと笑えるエピソードは、心の癒しになります。
矢部さんは1977年生まれ。
私よりも年上だけれど、地方出身の私にはとても共感する部分が多かったです。
春のつくし採りは、つくしの他にヨモギ採りも山菜取りも思い出しました。
東京生まれの矢部さんですが、東京にも自然が豊かなところがあったんだな、と矢部さんのお父さんに感心しました。
さすがに、風邪の時にミミズを煎じて飲むことはしませんでしたが、戦前生まれの祖父母に育てられた私も、民間療法はいくつも教えてもらったので懐かしく思い出しました。
世間から浮世離れしたようにも見える矢部さんのお父さんは絵本作家。
クリエイティブなお仕事をされている方は、型にはまらない面白さがありますね。
そして、ふとした時に言葉の威力を発揮する。
ハッとさせられる言葉があります。
その一瞬にとても惹かれますが、自由奔放な矢部さんのお父さんに、一般人かとお見受けする矢部さんのお母さんは多分大変だったのではないかな。
浮世離れしたお父さんと一般常識を持ち合わせたお母さんとお姉さんに優しく見守られながら、矢部さんはお育ちになったんだなと本から読み取ることができました。
矢部さんの子どもの頃のお父さんとの日常が、大人になった時の大家さんとの出会いにつながったのかもしれませんね。
色々あるけどまだまだ道は続く
そんな矢部さんとお父さん。
くしくも矢部さんは、お父さんと同じように本を出版するわけですが、矢部さんが出来上がった作品の最初の購読者がお父さん。
これもお父さんが矢部さんにそうしてもらっていたから。
普通って今ここにあるものなんですね。
そして家族って切っても切れない何かでつながっているのですね。
遠方に住む祖父母、父母とはなかなか会えないけれど、私も家族と共有できる何かを探して、会いに行ってみようかな。
クスっと笑えて温かな気持ちにさせられ、家族のありがたさを感じられる素敵な本でした。
今度矢部さんのお父さんの絵本も読んでみようっと。