学歴。人が評価される指標の一つ。
私の学生時代、「一生懸命勉強していい大学に入り、大きな会社に就職して、定年まで頑張ってコツコツ働く」といった漠然とした線路のようなものを教えてくれていました。
それが、日本の社会でそこそこ裕福な家庭を築くための最適解なのだと。
進路指導
私が高校生の時に、リハビリの技師になりたいと話したとき、先生から「リハビリの技師は病院に1、2人しかいないのだから就職に困るよ。もっと幅広く学べる分野にした方がいいよ」と進路変更を迫られ、信念の薄かった私は、パッとリハビリ技師への夢をあきらめてしまいました。
20年も前の話です。インターネット回線は今のように早くはなかったけれど、すでにインターネットはあったし、自分が学び調べようと思えばできたことなのですが、そうしなかったのは自分が流されやすく楽な方を向いて歩いてきたから。
今の生活にはとても満足しているけれど、当時を振り返ると、ちょっとした後悔です。
選択肢を広げて選んでいく
「1+1=2」当たり前のこと。
学校では、この当たり前のことを教えてくれます。
学校では事あるごとに「時間厳守、5分前行動」を教えてくれます。
これにもう一つ加えるとしたら、「可能性は無限だけれど、歳をとるっていくと可能性は減っていく」ということじゃないかと思います。
確かに子どもの頃は何にもとらわれずにみんなで同じ教科書で学び、遊んで成長していきます。
でも、いったん学校から帰ると、ピアノの練習をしたり、サッカーをやったり、絵画を描いたりして自分の好きなこと、周りの大人が導いたことをやります。
その結果、継続できたものが上手くなって楽しくなったりしますよね。
私もクラブ活動にはソフトボールに目覚めて、ソフトボールがあるから学校の勉強も楽しくなった経験があります。
地域では、「上手だね」と言われることの多かったソフトボールも高校に入ると全然レベルが変わり、太刀打ちできなくなりました。
仮に高校でレギュラーを取ったとしても、上野由岐子選手と対戦できない可能性の方が高いし、上野選手のボールをはじき返すことは困難だったと思います。
あの時に、ソフトボールでスペシャルな選手に慣れないことを知ったのは、残念なことでしたが、職業の選択肢を選ぶ上では、良い経験だったのかもしれません。
子どもの頃の経験は、選択肢を広げるとともに、自分にとって何をスペシャルなものに磨いていくかということを探していく時期なのかとも思います。
自分が磨いていくものを見つけられさえすれば、上達も早まるし、多少の困難も乗り越えられるはず。
これが、中年以降になると、守らなければならない家族や家庭もあるから、なかなか腰が上がらなくなります。
失敗は大いに結構だけれど、大きく転べるのは若いうちだけという特権なのですよね。
現代の「幸福」を分かりやすく教えてくれる本
幸せとは何なのか。
哲学的で、幸せをテーマにした本はたくさんありますよね。
今回出会った著書は、橘玲さんの『人生は攻略できる君たちはこれからどう生きるか?お金と仕事と幸せの授業』ポプラ社(2019/3/6)です。
高校生や大学生あたりの若者向けの著書で、とても分かりやすく私もこの本に高校生の時に出会っていたらよかったなと思うほどでした。
人生をロールプレイングゲームや人生ゲームに例えて、ルールを知らないと損をしてしまうこと。
自分で情報を取りに行って、自分で選択をしていくことの重要性や自分を客観視するために友達を活用すること、もしも学校でうまくいかなかったとしても、学校は特殊な場所だということを教えてくれます。
学校の難しさ
最近になって良くも悪くも芸能人やYouTuberが学校の話をされますが、確かにたまたま同じ地域の区切られた学年の子どもたちを集めて勉強を教えるという、特殊と言えば特殊な空間ですよね。
同級生同士の強い友情も生まれることもありますが、弾かれると逃げ場が少なく大変なことにもなりやすい。
ただ、多くの子どもたちに平等に学びを提供するためには、現状では最も良いとは言い切れないけれど、学校はなくてはならないもので、とても難しい問題ですよね。
多くの人がいろいろな意見を出し合い、テクノロジーなども駆使しながら、子どもと大人が選択できる社会になってくれるといいなと思います。
幸福の土台
本書では、幸福の基礎を3つに分けて説明してくれています。
1つ目は、お金(金融資本)。
2つ目は、仕事(人的資本)。
3つ目は、愛情・友情(社会資本)。
幸福はこの3つの「資本」の上につくられるというのです。
お金も、仕事も愛情もなければ幸せを感じにくく、不幸と思うかもしれません。
資本の割合は人それぞれ異なるけれど、3つの資本を併せ持つことで人は「幸せ」を感じることができるかもしれません。
人生ゲームをやりぬくために
若くて健康であれば労働力という人的資本が豊富にあるし、お金は少しずつ預金をしたり、投資をしたり工夫しながら時間をかけて資本を形成することができます。
愛情は相手のことを考え案じたり、慈しんだりしながら育まれるものだと思うので、時間的には長くも短くもあるかもしれません。
「幸福」をドライに考えると、幸福の土台は案外、今すぐやれるものも含まれていたりします。
ゲームには必ずルールがあるので、ルールをまず学ぶこと、最新のルール変更も確認しておくことで金融資本と人的資本は守りやすくなります。
あとは自分の理性と感性を高めること。
芸術に触れたり、旅に出たり、人と触れ合うことを重ねて、大事なところで正しい選択ができるように自分を磨くことなんだろうなと思います。
本書は、若い人向けに書かれた本ですが、年齢を重ねてもできることはあります。
時間という制限に拘らず、3つ目の愛情・友情(社会資本)など、身近な人に感謝の気持ちを伝えるだけでも自分が変わってきたりします。
幸福の土台の割合は人それぞれ。
どんな風にデザインしても自由です。
秋の夜長に初心に帰るような気持ちで読みましたが、自分を見つめ直す良いきっかけをくれた良書でした。