美術館で見かけた安野光雅さんの絵本。
子どもたちにせがまれて、ペラペラとページをめくっても文字は出てきません。
「これは何だろうね。こういう気持ちなのかな?」言葉はないのに会話がはずむ不思議な本。
美術って、自由に楽しんでいいんだなって教えてくれた本です。
子ども向け展覧会
美術館で子ども向けの企画があるんだって。
保育園の先生から美術館のチラシをもらった子どもたちが、夕飯時に「行きたい行きたい」とせがんできました。
企画の名前は『気になる!大好き!これなあに?』
子どもたちの目線で鑑賞ができるように工夫がされた企画展。
子どもOKなら行ってみようか。
軽い気持ちで美術館に出かけました。
美術館というと、静かに鑑賞する場所で、動きたい盛りの子どもたちと出かけるには、ちょっとハードルの高い場所。
私自身は全然美術に詳しくないし、子連れで楽しめるものなんだろうかと不安に思いながら、入館したのでした。
受付の方々は、とても親切で荷物の多い私たちに対して、返却式のコインロッカーがあることなどを教えてくれました。
混雑を避けるために、閉館1時間前に入館した私たちに、館内の効率的な回り方を教えてくれて、おすすめポイントまで教えてくれるサービスまでありました。
入館前は不安でいっぱいだった私たちは、受付の方のおかげで、不安という障壁が取り払われたかのように、館内を回ることができました。
絵画も彫刻も
子どもの鑑賞OKの企画展。一見すると子ども向けの絵画なんてないようなラインナップです。
大丈夫かな?
1枚目の絵を見ているときに学芸員さんが、話しかけてきてくれました。
「美術の楽しみ方は人それぞれです。赤ちゃんや小さい子の表情やしぐさに注目してみてください。興味のないものはサッと通り過ぎてしまうこともコツですよ」
へぇ~
そういう見方があるんだ。
なんとなく一枚一枚見ていった方がいいと思っていた私は、学芸員さんのアドバイスは斬新でした。
興味がないものはいくら話しても興味は沸きませんよね。
小さい子どもならなおさら。
その代わり、興味を持ったものは、じっとかじりついてみたり、指をさしたり言葉を発したりします。
子どもの鑑賞を大人がサポートするってこういうことなんだと体感しました。
我が子たちが気に入ったのは、ちょっと不気味な絵。
イチゴのような人のような姿が、面白かったみたい。
それから、タコの彫刻。
なぜにタコ?
と私は思ったのですが、あの曲線あたりが、気になったのでしょうか。
子どもたちの感性に自分も面白がって鑑賞することができました。
ABCの本
美術館を一通り見終えて休憩所にたどりついたその時、絵本のコーナーが設けられていることに、子どもたちが気が付きました。
本棚から見つけてきたのは、安野光雅さんの『ABCの本』
不思議なことに、この本には文字が出きません。
でも、あるのは、題名とサブタイトルである「へそまがりの アルファベット」
ページをめくると。
こういう感じ。
文字のない絵本なのに、子どもたちが色々なところに気が付いて話が尽きません。
文字のある絵本は、子どもたちに私が読み聞かせる感じ。
この本は、絵を見ながら子どもたちと語る感じ。
両方の絵を見ながら、答えのないクイズをしているかのように楽しみます。
時に、「?」という見方をする小さな眼力に、なるほど、そういう視点もあったかと妙に納得したり。
こうやって、見方を変えながら一人一人の見方があって、全部正解なのが美術鑑賞のいいところなんだろうな。
文字のない絵本から、美術鑑賞の仕方を学び、美術鑑賞に対する敷居がグッと低くなった気がしました。
子どもの視点から見える自由な発想。
それに応える大人の想像力。
絵本の楽しさや美術の楽しみ方を教えてくれた素敵な本に出会えました。